感染経験が「気づかぬ感染」への認知を高め、マスク着用を促す ―長期継続調査データで、感染前の違いをそろえて比較―The impact of COVID-19 infection experience on risk perception and preventive behaviour: a cohort study
村上道夫教授、三浦麻子教授、山縣芽生連携研究員の研究成果が公開されました。
概要
大阪大学感染症総合教育研究拠点の村上道夫教授、三浦麻子教授(大阪大学大学院人間科学研究科、感染症総合教育研究拠点兼任)と同志社大学文化情報学部の山縣芽生助教(感染症総合教育研究拠点連携研究員)の研究グループは、国内の成人を対象とした30回にわたるパネル調査(2020年1月〜2024年3月)のデータを用いて、COVID-19の感染経験が、その後のリスク認知と予防行動(手指消毒・マスク着用)にどのような影響を与えるかを検討しました。
研究のポイント
- 30回の追跡調査(2020年1月〜2024年3月)を用い、感染前の傾向が近い人同士を対応づけて(傾向スコアマッチング※1)、感染後のリスク認知※2や予防行動を比較。
- COVID-19に感染した経験のある人は、感染していない人よりもマスク着用の割合が高いこと(感染群94.8%、非感染群87.4%)と感染後、特に「気づかないうちに影響を受けているかもしれない」という“未知性”のリスク認知が高まったことが判明し、感染経験→未知性リスク認知の上昇→マスク着用というつながり(媒介効果※3)が統計的に支持された。
- 感染者の実感(例:気づかないうちに感染しうる)に基づく情報を、公衆衛生メッセージに活かすことが、未感染者の予防行動を後押しする可能性が示唆された。
Title
The impact of COVID-19 infection experience on risk perception and preventive behaviour: a cohort study
Authors
Michio Murakami, Mei Yamagata, Asako Miura
Journal
Published online in Epidemiology & Infection on January 2, 2026
DOI
https://doi.org/10.1017/S0950268825100940

村上 道夫 教授のコメント
感染症に限らず、経験が認知を形づくり、行動をもたらすことが知られています。「感染するとリスク認知や予防行動に変化をもたらすのではないか」という共同研究者の何気ない一言が本研究のヒントになりました。感染すると抗体ができますが、だからといって予防行動をしなくなるわけではありません。「自分では気づけない感染がありうる」という感覚が、予防行動を支えることがあります。感染経験者の実感を丁寧に言語化し、未感染者に届く形で共有することが、次の流行への備えにもつながります。