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2025.05.14
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PRESS RELEASE

低酸素下での炎症性線維芽細胞を介したがん進展の新規メカニズムの解明Novel mechanism of inflammatory fibroblast-mediated cancer progression under hypoxia

大阪大学感染症総合教育研究拠点(CiDER)の原田昭和特任助教(常勤)、菊池章特任教授(常勤)らの研究グループは、大腸がんの表面近くの一部の場所で炎症を背景に酸欠状態が起きると、がんの成長を助けることを世界で初めて明らかにしました。

概要

これまで、がん細胞も正常の細胞と同じく、血管から酸素を受け取って勢いよく増えていると考えられてきました。つまり酸素が足りないと、がんの成長にブレーキがかかると思われていました。

今回、研究グループは、大腸がんの局所的な酸欠状態に注目し、酸素が足りなくなることでがん細胞の周りを取り囲む線維芽細胞(せんいがさいぼう)が「悪玉」へと変化し、がんの成長にブレーキをかけるのではなく、むしろがんの成長が進むという仕組みを解明しました。

大腸がんの治療には、がん細胞を酸欠状態にする薬が治療に使われることがあります。しかし、場合によってはがんを悪化させることがあり、今回の結果はそうした矛盾の理由を説明できることから、新たな治療法の開発につながることが期待されます。

研究成果のポイント

  • 炎症関連線維芽細胞が酸素不足により「悪玉」となり、大腸がんの成長を助長していることを発見
  • これまで、がんの成長には酸素が必要と考えられ、がん細胞へ酸素を与えないようにする薬が使われてきたが、薬が効くケースは少なく、その理由は不明だった
  • 線維芽細胞を標的としたがんや自己免疫疾患などの新たな治療法の開発につながることに期待

本研究成果は、英国科学誌「Nature Communications」に2025年4月17日に公開されました。

Title

“Hypoxia-induced Wnt5a-secreting fibroblasts promote colon cancer progression”

Authors

Akikazu Harada, Yoshiaki Yasumizu, Takeshi Harada, Katsumi Fumoto, Akira Sato, Natsumi Maehara, Ryota Sada, Shinji Matsumoto, Takashi Nishina, Kiyoshi Takeda, Eiichi Morii, Hisako Kayama & Akira Kikuchi

DOI

https://doi.org/10.1038/s41467-025-58748-9