下水サーベイランスに求められる適切な調査方法を明らかに―地域のより的確な新型コロナ感染状況の把握に向けて―Evaluating survey techniques in wastewater-based epidemiology for accurate COVID-19 incidence estimation
大阪大学感染症総合教育研究拠点の村上道夫教授と北島正章連携研究員(本務:東京大学大学院工学系研究科特任教授)は、地域のCOVID-19(新型コロナ感染症)の感染状況を把握するために必要な下水サーベイランス(下水疫学)の調査方法を解析し、適切な調査方法に求められる条件を明らかにしました。
適切な調査方法に求められる条件
- データの取り扱い:検出下限値(LODLOD)未満の試料の濃度に関しては、分布によって推定したうえで幾何平均値を用いて代表値を算出すること
- 分析感度:LOD 未満の試料の割合が40% 未満であること
- 分析再現性:常用対数変換したうえでの標準偏差として0.4 以下であること
- サンプリング頻度:週に3 試料以上(可能であれば5 試料以上)測定すること
- 調査頻度:50週以上の調査を行うこと
本研究成果は、国際学術誌「Science of the Total Environment」(オンライン)に、2024年10月5日に公開されました。
Title
“Evaluating survey techniques in wastewater-based epidemiology for accurate COVID-19 incidence estimation”
Authors
Michio Murakami, Hiroki Ando, Ryo Yamaguchi, Masaaki Kitajima
DOI
https://doi.org/10.1016/j.scitotenv.2024.176702

村上 道夫教授のコメント
「下水中のウイルス濃度がばらつくために、下水サーベイランスでは地域の感染状況を十分に把握できない」という意見をしばしば見聞きします。新型コロナ感染症の例であれば、適切な方法で調査すれば、極めて的確に地域の感染状況を把握できる、というのが私たちの考えです。本研究は、下水サーベイランスに求められる調査方法とはどのようなものかということを、新型コロナ感染症を例に具体的に示した点で大きな意義があります。