Home | CiDER 大阪大学感染症総合教育研究拠点

search
Home - 最新情報 -  オミクロン株流行下の抗原定性検査の感度と特異度が判明 ― Jリーグの選手とスタッフを対象にした検査から ―【村上道夫特任教授ほか】
papers研究成果
2023.01.30
PRESS RELEASE

オミクロン株流行下の抗原定性検査の感度と特異度が判明 ― Jリーグの選手とスタッフを対象にした検査から ―【村上道夫特任教授ほか】

研究成果のポイント

  • 新型コロナウイルス感染症のオミクロン株流行下において、Jリーグのクラブの選手やスタッフの方々を対象に、同一日かつ同一個人に行われたPCR(polymerase chain reaction)検査と抗原定性検査の656件の結果に基づいて、抗原定性検査の感度※1と特異度※2を明らかにしました。
  • PCR検査と比べた抗原定性検査の感度は63%(95%信頼区間※3:53–73%)、特異度は99.8%(95%信頼区間:99.5–100.0%)でした。
  • 症状の有無や感染してからの日数は、PCR検査と比べた抗原定性検査の感度に影響しませんでした。
  • 抗原定性検査を用いた検査体制の有効性を評価する上で不可欠な基盤的知見を提供することができました。

研究成果の概要

大阪大学感染症総合教育研究拠点特任教授(常勤)の村上道夫、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)フットボール本部新型コロナウイルス対策部オフィサーの佐藤一志、産業技術総合研究所地質調査総合センター研究グループ長の保高徹生、東京大学医科学研究所附属ヒトゲノム解析センター健康医療インテリジェンス分野教授の井元清哉らの研究グループは、新型コロナウイルス感染症のオミクロン株流行下において、Jリーグのクラブの選手やスタッフの方々を対象に同一日かつ同一個人に行われたPCR検査と抗原定性検査の656件の結果に基づいて、抗原定性検査の感度と特異度を明らかにしました。PCR検査と比べた抗原定性検査の感度は63%(95%信頼区間:53–73%)、特異度は99.8%(95%信頼区間:99.5–100.0%)であり、PCR検査と比べた抗原定性検査の感度は、症状の有無や発症から検査までの日数とは関連しませんでした。このことは、症状の有無や感染してからの日数は、PCR検査と比べた抗原定性検査の感度に影響しないことを意味しています。

感染直後においてオミクロン株に対して抗原定性検査の感度が低下する可能性が指摘されていましたが、抗原定性検査の感度を明らかにするには、同一日に行われたPCR検査と抗原定性検査を比較する必要があるために、これまで十分なデータ数に基づいた知見は得られていませんでした。JリーグとJクラブの選手やスタッフの方々の協力によって得られた本研究により、抗原定性検査を用いた検査体制の有効性を評価する上で基盤的知見を提供することができました。

掲載論文

本研究成果は、英国科学誌「BMJ Open」に、2023年1月30日(月)に公開されました。

タイトル

Sensitivity of rapid antigen tests for COVID-19 during the Omicron variant outbreak among players and staff members of the Japan Professional Football League and clubs: A retrospective observational study
著者名:村上 道夫, 佐藤 一志, 入江 知子, 加茂 将史, 内藤 航, 保高 徹生, 井元 清哉

DOI

http://dx.doi.org/10.1136/bmjopen-2022-067591

本研究は、日本財団・大阪大学 感染症対策プロジェクトの一環として行われました。

ResOU

https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2023/20230130_3

村上特任教授のコメント

オミクロン株流行下において、特に感染直後の抗原定性検査の感度が低下することが懸念されていましたが、本研究では、感染してからの日数によらずに、PCR検査に対しての抗原定性検査の感度がおよそ6割程度であることを明らかにすることができました。本研究は、JリーグとJクラブの選手やスタッフの方々のご協力の賜物で得られた貴重な知見です。関係者の方々に深い感謝の意を表します。

用語説明

※1 感度
ある疾病をもつ人に対して行われた検査において、正しく陽性となった人の割合のこと。本研究では、PCR検査で陽性となった人の内、抗原定性検査でも陽性となった人の割合を指す。

※2 特異度
ある疾病をもたない人に対して行われた検査において、正しく陰性となった人の割合のこと。本研究では、PCR検査で陰性となった人の内、抗原定性検査でも陰性となった人の割合を指す。

※3 95%信頼区間
95%の割合で真の値が含まれる範囲のこと。

オミクロン株流行下の抗原定性検査の感度と特異度が判明 ― Jリーグの選手とスタッフを対象にした検査から ―【村上道夫特任教授ほか】 | CiDER 大阪大学感染症総合教育研究拠点