Home | CiDER 大阪大学感染症総合教育研究拠点

search
Home - 最新情報 -  検査数の減少で見えなくなる感染拡大 ―下水サーベイランスが明らかにした“報告されない感染”の実態―
papers研究成果
2026.02.09
NEW
PRESS RELEASE

検査数の減少で見えなくなる感染拡大 ―下水サーベイランスが明らかにした“報告されない感染”の実態―Insights from wastewater surveillance into testing-related underreporting and hospital-acquired SARS-CoV-2 infections

村上道夫教授、北島正章連携研究員らの研究成果が公開されました。

概要

大阪大学感染症総合教育研究拠点の村上道夫教授、北海道大学病院感染制御部(当時)・ソフィア北円山クリニックの石黒信久博士、札幌市下水道河川局事業推進部の石田睦課長(水質管理担当)、東京大学大学院工学系研究科附属水環境工学研究センターの北島正章特任教授(感染症総合教育研究拠点連携研究員)らの研究グループは、札幌市の下水中の新型コロナウイルスRNA濃度と、北海道大学病院内で報告された感染者数や検査数の関係を解析することで、病院内の報告感染者数は下水中ウイルスRNA濃度が示す感染規模よりも大きく下振れしていることが分かり、見逃された感染が増えている可能性を明らかにしました。

研究のポイント

  • 下水中のウイルス量と比較することで、検査数が減少すると実際の感染者数が過小に把握され、見逃された感染が増えている可能性を明らかに。
  • 臨床検査データだけでは捉えにくい感染拡大や医療関連感染(院内感染)の兆候が、「下水サーベイランス」によって把握できることから、検査体制が縮小した状況でも地域全体の感染動向を調べる既存の監視手法を補完する有効な手段となることに期待。
  • 本研究は、「検査数の変化が感染状況の見え方を大きく左右する」ことを実証的に示し、今後の感染症監視体制の設計に重要性を示した。

Title

Insights from wastewater surveillance into testing-related underreporting and hospital-acquired SARS-CoV-2 infections

Authors

Michio Murakami, Nobuhisa Ishiguro, Hiroki Ando, Mutsumi Ishida, Toshihiro Hamada, Sho Nakakubo, Reiko Oyamada, Takahiro Hayashi, Yusuke Niinuma, Keisuke Kagami, Tatsuya Fukumoto, Keisuke Taki, Tomoyuki Endo, Masaaki Kitajima

Journal

Published online in Environment International on December 24, 2025

DOI

https://doi.org/10.1016/j.envint.2025.110028

村上 道夫 教授のコメント

感染者数が減っているように見えるときでも、それが必ずしも感染リスクの低下を意味するとは限りません。本研究は、検査数が減少すると実際の感染拡大が統計上は見えにくくなることを、下水データという独立した指標から示しました。下水サーベイランスは、検査体制や受診行動の変化に左右されにくく、社会全体の感染状況を客観的に把握できる手法です。今後の感染症対策では、検査データだけに頼らない多層的な監視体制を考えることが重要だと考えています。