コロナ禍3年間で「感染は自業自得」と「政府による行動制限」に対する考え方はどう変わったか:国際比較Differences in and associations between belief in just deserts and human rights restrictions over a 3-year period in 5 countries during the COVID-19 pandemic
大阪大学感染症総合教育研究拠点の村上 道夫特任教授(常勤)、三浦 麻子教授(大阪大学大学院人間科学研究科、(兼)感染症総合教育研究拠点)、平石 界教授(慶應義塾大学文学部)、山縣 芽生助教(同志社大学文化情報学部、(兼)感染症総合教育研究拠点 連携研究員)、中西 大輔教授(広島修道大学健康科学部)らの研究グループは、コロナ禍3年間にわたっての「感染は自業自得」と「政府による行動制限」に対する考え方の国際比較を行いました。
感染拡大初期(2020年春と夏)の調査では、日本の自業自得感は他国よりも高いことが知られていました。しかし、その経年変化や自業自得感と行動制限意識の関係については詳しくは検討されていませんでした。そこで今回、村上道夫特任教授(常勤)、三浦麻子教授らの研究グループは、日本、アメリカ、イギリス、イタリア、中国を対象に2021年と2022年の春に実施したアンケート調査データを加えて、コロナ流行後における自業自得感と行動制限意識の経年変化及び各国における両者の関係性を調べました。
その結果、自業自得感は日本で高く、イギリスで低い傾向がありました。また、中国を除いた4ヶ国では、2020年から2021年にかけて自業自得感が増加していました。行動制限意識は中国が高く、日本が低いものでした。日本では、2020年から2021年にかけて、アメリカ、イギリス、イタリアでは、2020年から2022年にかけて行動制限意識が低下していました。
自業自得感と行動制限意識に正の関係が見られた日本とイタリアを対象に両者の因果関係を分析したところ、自業自得感が低い人の行動制限意識は徐々に弱まった一方で、行動制限意識が高い人の自業自得感は強まったという結果が共通して示されました。
このことから、日本では、感染症が流行した際に差別や偏見を軽減するためには、感染流行初期に、「感染は感染者自身のせいではない」という啓発を、行動制限意識が高い人に対して行うことが重要だと考えられます。
本研究成果は、英国・米国の科学誌「PeerJ」(オンライン)に、2023年9月28日に公開されました。
Title
“Differences in and associations between belief in just deserts and human rights restrictions over a 3-year period in 5 countries during the COVID-19 pandemic”
Author
村上 道夫*, 平石 界, 山縣 芽生 , 中西 大輔, Andrea Ortolani, 三船 恒裕,Yang Li, 三浦 麻子 (*責任著者)
DOI
http://dx.doi.org/10.7717/peerj.16147

三浦 麻子教授のコメント
2020年春に実施した調査で「自業自得感」の国別集計結果を目にした時、日本の高さにまず驚き、次に過去の自分たちの研究を思い出して「やはり」と納得したことを今でもよく覚えています。それが良いとか悪いとか言いたいわけではなく、感染禍の社会心理のスナップショットを撮り続けてきたことが、こうしてひとつ実を結んだことは感慨深いです。