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大阪大学

客観性の落とし穴?

 

今回の講義は、「数値による知識」と「経験」のずれと重なり合い、というテーマでお話しします。
村上教授の近著『客観性の落とし穴』で提唱されているのは、すべての真実が客観性と数値に基づいていると思い込む現代の状況への疑問です。ですが、それは決してエビデンスに基づく科学を否定するものではありません。数値を通じて外部から物事を見つめ、理解する自然科学や社会科学の視点は、非常に有益です。しかし、個々の経験や背後のストーリーは、常に客観的な知見や数値に収めることはできません。それぞれの経験に焦点を当てることで、エビデンスによる知見がより豊かになります。
今回は、数値による分析を得意とする三浦教授と、経験を重視する村上教授との対談形式で行い、科学的なエビデンスと個々の経験の間にどのような関係があるのかを再考します。
この対談を通じて、我々の世界を理解するための新たな視点を見つけることを期待しています。それぞれの視点が相互補完し、一緒に働く様子を、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

 

【大阪大学大学院 人間科学研究科 教授 /
大阪大学感染症総合教育研究拠点 教授(兼任)】
村上 靖彦
2000年パリ第7大学で博士号取得(基礎精神病理学・精神分析学博士)。
専門は哲学および現象学的な質的研究。著書に『在宅無限大』(医学書院)、『子どもたちが作る町』(世界思想社)、『ケアとは何か』(中公新書)、『交わらないリズム』(青土社)、『「ヤングケアラー」とは誰か』(朝日選書)、『客観性の落とし穴』(ちくまプリマー新書)、他。
【大阪大学大学院 人間科学研究科 教授 /
大阪大学感染症総合教育研究拠点 教授(兼任) 】
三浦 麻子

1969年京都市生まれ。博士(人間科学)。専門は社会心理学。コミュニケーションやインタラクションが新しい「何か」を生み出すメカニズムを解明することに関心をもつ。感染禍という「状況の力」が人間の心理・行動に与える影響について量的アプローチで検討している。