世界のコロナ禍を通して見えた日本の学校保健
コロナ禍で感染拡大予防策として、石鹸による手洗いの重要性が再認識されました。
本講義では、まずはじめに大阪大学の杉田氏が、手洗い推進の国際的な支援について紹介するとともに、日本の小中学校において、コロナ禍以前より実施されていた手洗い教育について振り返ります。続いて、信州大学の友川氏より、日本の学校保健の特徴と学校における感染症対策について説明があります。コロナのパンデミックで広がったのは感染だけではありません。社会不安という側面もあります。琉球大学の小林氏は、学校を通じて感染と社会不安から人々を守り、いかにしてポストコロナの強い社会を作ることができるかについて議論します。
■講師紹介
杉田 映理 氏
大阪大学大学院 人間科学研究科 准教授、大阪大学感染症総合教育研究拠点 准教授
フロリダ大学 Ph.D.(人類学)。学部卒業後、JICA 職員として社会開発協力部、ケニア事務所に勤務。その後、98年フロリダ大学人類学部修士課程、ジョンズホプキンズ公衆衛生大学院サマーコース修了。2004年フロリダ大学人類学部博士課程修了。 アメリカ赤十字社ボランティア、WSP(Water & Sanitation Program)コンサルタント、JICA客員国際協力 専門員、東洋大学国際地域学部教員などを経て、2017年より現職。専門は医療人類学、開発人類学。国際学校保健コンソーシアム事務局メンバー。
友川 幸 氏
信州大学教育学部 准教授(CiDER連携研究員)
博士(保健学)。広島大学大学院国際協力研究科修士課程在学中に、JICA青年海外協力隊事業に参加し、西アフリカのニジェールにて学校保健の普及活動に尽力。広島大学大学院保健学研究科保健学専攻博士課程修了後、学術振興会特別研究員、総合地球環境学研究所(プロジェクト研究員)を経て、2010年より現職。専門は、国際学校保健学。アジア・アフリカの開発途上国の学校保健政策、保健教育に関する教材開発、教員研修などに関する研究を実施。2010年より国際学校保健コンソーシアムの事務局長を務め、2015年には、世界保健機構の本部にて、コンサルタントとして、国際的な学校保健活動の推進のための業務に従事。2008年より、東南アジアのラオスにて、教員養成機関での健康と環境の双方に配慮できる人材を育てる「エコヘルス教育」の開発と普及を支援している。2020年には、ラオスでの一連の成果が評価され、国際保健医療学会の奨励賞を受賞。
小林 潤 氏
琉球大学大学院保健学研究科 研究科長・教授(CiDER連携研究員)
1990年琉球大学医学部医学科卒、1995年琉球大学博士(医学)。琉球大学助手、助教授、国立国際医療センター国際医療協力局医師、長崎大学国際健康開発研究科准教授を経て、2013年より琉球大学教授。卒後一貫して国際保健の実践と研究に取り組み、国際協力機構(JICA)専門家にて、ブラジル、ラオス、タイに長期派遣される。2000年より橋本イニシアティブ(国際寄生虫対策)に関わり、アジア・アフリカ地域の学校保健の世界普及に携わった。国策として支援終了後、2010年学校保健の世界的普及のためのシンクタンク:国際学校保険コンソーシアムを結成し、現在まで理事長を務める。政策とその実践に関わる研究や、研修コースを主催しアジア・アフリカ地域の学校保健実践のための人材育成に寄与してきた。現在、新たに太平洋島嶼国への普及に政策面からの支援を開始している。2002年ラオス国労働功労章勲三等叙勲、2013年大山健康財団奨励賞、2016年ノーモアマラリアジャパン・ゼロマラリア賞、2017年日本熱帯医学会相川正道賞