阪大発
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大阪大学

【CiDERシンポジウム】参加者からの質問
〈ワクチン編〉

質問1)新型コロナウイルスのワクチンの効き目がよくなったとか、特効薬ができたとか、なにか進展があるのでしょうか?

【感染症専門医】
忽那 賢志

 

〈治療薬〉は、大きく分けて、ウイルスの遺伝子を複製するところを阻害したりする「抗ウイルス薬」と、ウイルスを中和させる「中和抗体薬」の2種類があります。どちらも広く使われるようになってきていて、特に今は飲み薬で「抗ウイルス薬」が使えるようになり、早く飲めば重症化を9割近く防ぐことができます。ただ、「重症化しやすい人(高齢の方や持病のある方等)」に対して有効であることがわかっているので、今のところは対象が限定にはなっていますが、(新型コロナウイルスの流行初期の)2年半前と比べると、治療の選択肢はいろいろ増え、重症化しない方も増えてきています。今後は、いかに早く診断し治療を開始するか、がポイントになります。

 

 

【免疫学】
伊勢 渉

 

〈ワクチン〉は、従来型に加えて、オミクロン株にも対応できる二価ワクチン(従来株とオミクロン株に対応した成分の二つが含まれているワクチン)が、この秋から接種が可能となります。

まずは最初に接種可能になるのは(BA.1)ですが、アメリカでは(BA.4)(BA.5)に対応可能なワクチンが作られていますので、いずれ接種可能になると思います。

〈治療薬〉の「中和抗体薬」は、アストラゼネカ社が新たに開発した「エバシェルド」という治療薬が承認されました。

これは、2種類の抗体を混ぜて(抗体カクテル)筋肉注射するもので、抗体を接種する治療薬は以前からあったのですが、今回の新しい薬は、抗体の構造を変えることによって、抗体の作用持続時間が以前の抗体の3倍以上効果が持続するようになりました。しかし、どなたでもすぐ接種できるわけではなく、免疫不全の方や重症化リスクの高い方が優先になると思われます。

 

質問2)ワクチンの予防および重症化、後遺症の軽減効果は定量的にどのくらいあるのでしょうか?またどのような人が副反応を生じやすいのでしょうか?

【感染症専門医】
忽那 賢志

 

ワクチンの予防効果は、今流行している変異株の種類や接種からの時間経過によって異なります。今後はワクチンの接種回数によっても異なってきます。

オミクロン株に対しては2回接種直後で60〜70%の感染予防効果で、時間経過とともに低下していきます。3回目の接種で再度70%程度まで効果が上昇しますが、これも経時的に低下します。

重症化予防効果はオミクロン株でも90%以上保たれています。時間経過による影響を受けにくいですが、高齢者では下がりやすい傾向にあります。

感染後の後遺症を防ぐ効果は15%程度という報告があります。また、ワクチン接種の副反応が出やすいのは、一般的に若い人、女性に多いといわれています。

 

 

【自然科学】
池田 陽一

 

mRNAワクチンは従来株に効くように開発され、幸いデルタ株まで有効でした。

 

 

 

デルタ株の流行では、ワクチン接種によりリンク切れ確率が上がり、感染者数は30-40%にまで抑制されました。重症化率も3%から1%まで下がりました。オミクロン株に対して、顕著な予防効果は見えていません。

 

質問3)今後もワクチン接種を続ける必要があると思いますか?

【感染症専門医】
忽那 賢志

 

今後もワクチン接種はおそらく続きます。

変異株の種類、ワクチンの種類によって接種する頻度、有効性は変わってきます。また、年齢、基礎疾患の有無によっても接種間隔が変わってきます。

現時点では新型コロナの感染予防効果が長期的に維持されることはないため、多かれ少なかれ接種は続くと思われます。

 

質問4)なぜ新型コロナウイルスのワクチンは短期間で開発されたのでしょうか?安全性が低いといったデメリットはないのでしょうか?

【免疫学】
伊勢 渉

 

https://www.at-s.com/news/article/health/haien/haien_faq/860616.html

 

ワクチンが短期間で開発された背景は以下の理由が挙げられます。

 

・類似したウイルスに関する研究が行われていたこと

mRNAワクチンの研究はかなり以前から行われていたこと

・パンデミック(大流行)になったことによって臨床試験の対象となる人がたくさん確保できたこと

・米国政府などからワクチン開発のために大量の資金が投入されたこと

 

ワクチンの安全性について、今回のmRNAワクチンの効果と安全性を評価する臨床試験は、従来のワクチンと比較しても大規模な試験が実施されており、現在も有効性や安全性の検証が行われています。