阪大発
感染症情報サイト

大阪大学

【大阪大学・CiDERシンポジウム】
参加者からの質問
〈ワクチン接種における情報選択や不安について〉

質問1)新型コロナウイルスワクチンを接種しないという選択について、どう考えればよいでしょうか?

【行動経済学】
佐々木 周作

 

ワクチン接種は感染症対策として非常に重要で、社会全体としては推進されています。一方で、ワクチン接種の情報提供が国民に向けて十分になされ、時間が経っても「接種を受けない」という選択を続けられている方の選択は、尊重されるべきと思います。
「反ワクチン接種の運動」と呼ばれる動きも、一時的には「ワクチン接種を推進する」という面でハードルになるとしても、もしかしたらアフターコロナの社会を目指していくときには、そういった動きが社会の原動力・推進力になってくれるかもしれません。いろんな価値観がある社会の中で、それぞれの価値観を認め合って共存することが大事だと思います。

 

【免疫学】
宮坂 昌之

 

多くの病院で重症病床の7~8割の患者さんがワクチン未接種の方です。そのような事実を知った上で、ワクチン接種をしないという選択があるとは思います。いかに正しい知識を知っていただくかが大切だと思います。

 

〈参考情報〉

1. JAMA 2022

https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2796235

2. Eric Topol氏のTwitter

(新型コロナウイルス感染症に関して最も精力的に医学的知見を発信している人の一人)

https://twitter.com/EricTopol/status/1598751049925681152
https://twitter.com/EricTopol/status/1598751055730593792/photo/1

質問2)感染症やワクチンなど健康における情報選択を迫られた場合、高齢者や若年者の正しい情報の取り方は今後どのようにしていくべきでしょうか?

【行動経済学】
佐々木 周作

 

行政からダイレクトメールを郵送したり、テレビやラジオで発信したりといったアナログ・伝統的な情報発信が大事、と改めて実感しています。最近は、インターネットでの情報発信が非常に重視されていますが、ホームページまでわざわざ見に行く人は少ないと思います。人間の自発的な情報収集の仕方は偏っていますので、元々関心がなかった人にもしっかりと信頼できる情報を届けていけるプッシュ型のチャネルをこれからも確保することが大切だと思います。例えば、風しん抗体検査・ワクチン接種では、クーポン券を自治体から郵送するときに一緒に適切な情報提供をしたことで、受検率が上がったことを確認しています。また、テレビを信頼している人ほど新型コロナウイルスワクチンの接種スピードが早かったという分析結果も出てきています。

 

【産婦人科学】
八木 麻未

 

HPVワクチンに関しては、現在、定期接種とキャッチアップ接種(接種を逃した方のための接種)があります。定期接種の対象年齢の小学校6年生から高校一年生は、まだ自分の健康について自分で決めることができる年齢には至っていないと思いますので、保護者の情報選択が大事になります。テレビやメディアだけで取り上げられる情報だけではなく、厚労省や自治体のホームページを御自身で確認し、自分の価値観と照らし合わせて子供の健康をどう守っていくのかを決断する力を保護者の方に身につけて頂ければと思います。また、キャッチアップ接種対象の方は、SNSやネットニュースからしか情報を収集しないという方が増えていると思いますが、同じく自治体からの情報やかかりつけ医からの情報などをしっかり理解して、意思決定できるようになってくれたらと思います。

 

質問3)新型コロナや子宮頸がんのワクチン接種が推奨されると、ワクチンの副反応を心配するにとどまらず、デマが拡散することもあります。しかし、乳幼児期の定期接種に対しては、不安視する声は多くはあがりません。このような違いが起こる原因は?

【産婦人科学】
八木 麻未

 

乳幼児期の定期接種に対しては、”今は” 不安視しないということだと思います。昔、MMRワクチンが大きな問題になったことがありましたが、小児科医や医療関係者の方々が不安を抱いているお母さんに対して乳幼児健診の際に丁寧な説明を積み上げてきたからこそだと思います。一方で新型コロナウイルスワクチンやHPVワクチンは、SNS時代に一気に接種が進んだため、被害を訴える方がSNSに投稿したり、ネガティブな情報がインターネット上で爆発的に拡散されたことが背景にあると思います。

 

【行動経済学】
大竹 文雄

 

乳幼児期の定期接種を不安視しないのは、皆が接種しているということがあります。皆がマスクをするからマスクをするということと同じで、皆が接種していると、「接種するのが自然」という考えになり、それに従うようになります。また、自分の経験や知っている人の話というのは非常に大事で、人間には「新たに知ることよりも、すでに知っていることのほうを重視して意思決定する」という傾向があので、乳幼児健診の際に親が接種した経験があるから子供にも接種をさせる、ということもあると思います。

 


【 2月17日までYoutubeでアーカイブ配信 】大阪大学・CiDERシンポジウム「私たちのくらしとワクチン」